2006年9月公開
監督 土井裕泰
出演 妻夫木聡 長澤まさみ 麻生久美子
どれほどまでに、人は人のためにどれだけ生きられるのか?幼い頃に母(小泉今日子)は病床のとこに臥し不帰の人となった。最後に交わされた言葉は、「カオルは独りぼっち、どんなことがあっても守ってあげるのよ」だった。その言葉を胸にひたむきに生きてきた新垣洋太郎(妻夫木聡)。いつかは自分の店を持ちたいという夢を抱いている優しい青年。そんな彼に楽しみが増えた。それは、妹のカオル(長澤まさみ)が高校に合格し、オバァと暮らす島を離れ本島にやってくるのだ。やがて兄妹の二人暮らしが始まる。兄妹といっても血は繋がっていない。というのも洋太郎が8歳のころに母の再婚によって妹となったカオル。だが義父は姿を消して母も不帰の人となる。以来、妹の面倒をみてあげるのはオレだけだと思い生きてきた。
冒頭に述べた通り、人は人のためにどれだけ生きられるのか?そんなテーマを抱かせる作品であった。兄は妹のためを思い生きている。そんな兄を疎ましく思わずにーにーと慕う妹。それはどんなときでも変わらなかった。元来、人を思いやるということが日本人の美徳として長い間培われてきた。しかし、今、その牙城が崩されそうになっている。自分さえ良ければ、自分たちさえよければ、人のことはおかまいなしという風潮が蔓延しつつある中、どうどうと人を思いやるとはどういうことかを真正面から描いた映画である。
最後の最後まで妹を心配し続ける兄。それは親にも似た感情だったのかもしれない。たとえ血は繋がっていなくても妹は妹。それを静かに情感たっぷりに描いている場面。それはラストシーンに表現されている。涙なくしてはみられない場面。にーにーを想うカオルの切なさ。家族としての愛、男女としての愛、そんなものが混ざり込み曖昧な感覚で突き進む。相手のことを思いやるあまりに本音を言えない雰囲気がこの作品の随所でみられる。
もう一度、人が人のためにどれだけ生きられるのか?言い換えれば、人のためにどれだけ思いやりが持てるのか?現代の社会では、失われそうな思いやりの精神をもう一度自問自答してはいかがなものか?心が洗われる作品です。必見ですよ。
オススメ度 ★★★★★ 思いやりの心をどこかに忘れてはいませんか?
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