高齢化社会。その中では老人の孤独死という問題も隠されている。少子化と叫ばれ続けながらも、一方では児童への虐待が後を絶たない。労働人口も減りながらも、失業率も同様に減らない。そんな現代社会が内包している問題をうまく取り込みながら本作品は描かれている。
あらすじは、草薙が公安9課から去って2年。トグサが9課のリーダーとなっている。新たに、手には梵という刺青をしている者たちが連続自殺を起こしている。共通しているのは元シアク共和国のカ・ルマの親衛隊員が次々と自殺を謀る。この自殺の意味するところは、新たなテロの始まりの合図に過ぎないのか?そんな中、カ・ルマの長男であるカ・ゲル大佐までもが自殺を謀る。死ぬ間際に傀儡廻しという意味不明な言葉を残して逝ったのである。呆然とするトグサたち。調査を続行していくうちに、新たな謎が出てきて戸惑う9課。果たして事件の全容を掴むことが出来るのか……。
最初から最期まで飽きさせることなく次から次へと謎が出てくる展開。攻殻機動隊のシリーズでは地味ではあるものの、冒頭に述べたように、色々な現代社会が抱えている問題を物語に巧く取り込んでいるのは秀逸といえる。何度も観たいと思わせる作品に仕上がっている。
見所は、何度も言うように、老人介護問題や、少子化が問題になっているのに、皮肉なことに児童虐待が日々起こっていることである。これは、現代社会が憂う問題をアニメーションの中にメッセージを含んでいることである。それに加え、労働人口が減っているのに、逆に失業率がのびているという相反する問題にも触れている所である。
一番、印象に残っているのは最期の草薙のセリフである。一部引用させてもらう。
>自分の非力さを組織やシステムのせいにしていただけなのかしら。(草薙)
>また、個人的推論にのとった事件への介入を続けるのか(バトー)
>それも限界ね。規範の中にいる時は、それを窮屈と感じるけど、規範なき行為は、また行為として成立しない。結局堂々巡り(草薙)
この言葉が示唆しているのは何なのか?
自分の弱さを棚にあげて、組織やシステムのせいにしている。窮屈だと思いながらも働いている人もいる。それを嫌がってドロップアウトしたところで、どこかで規範がないことには、その行為自体が無意味になってしまうということではないだろうか?僕は、この言葉を胸に刻み付けて生き続けたいと感じる。
オススメ度 ★★★★★ この現実から目を背けることは出来ない。
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