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2009年02月15日

妄想小説 食べ歩記

お久しぶりです。

DVDは観ているんですが、最近、なかなか記事に出来ていません。
なので、エッセイみたいな妄想小説を書いてみました。
まあ、息抜きで読んで頂ければ幸いです。それでは!




 今日は行きつけの居酒屋が休みなもんで、どこか手頃でいい店がないのか探しながら歩いてみた。いつもは見慣れた街並みなのに、どこか新鮮さを感じる。今までは、何気なく通っていたのだけれど、こうしてつぶさに観察して歩いてみると新たな発見があって何だかワクワクして楽しい。

 あっ、こんなところに新しくパン屋が出来ている。以前利用していたけれど、長い間、通っていなかった本屋はまだ潰れずに残っている。ここにあった酒屋は潰れてコンビニに変わっている。などなど、改めて、日々の雑事に忙殺されていることに気づかされる。たまには、こういった感じで街を歩くのもいいなと思う。

 そこで、一軒の居酒屋に目がいく。その居酒屋は表通りから少し入った野路裏にひっそりと佇むように建っていた。店の雰囲気もどことなく家庭的な雰囲気を醸し出している。僕が好むような店のたたずまいである。

 表に出てあるメニューの看板を見ると、値段は高くなく、どちらかと言えば、安い居酒屋である。パッと眺めると、最も高いものでもカキフライ\600くらい。ちなみに生ビールの中ジョッキは\450。割と庶民的な値段である。ここに入ろうと決意をする。

 何にしても、初めての店と言うのは緊張する。どんな人がやっているのだろう。気難しい主人なのか、それとも気さくな人なのか、肝心の料理の味はどうなのかなどと、心配事は尽きない。それでも勇気を振り絞って居酒屋の暖簾をくぐることにする。ドアも自動ドアでなく引き戸なのがいい。どれどれと引き戸をひこうとすると、固くなかなか開かない。ちょっと力を入れてガラッガラッと引いて開ける。

 「いらっしゃいませ」と明るい声で女将が僕を出迎えてくれる。どうやらひとりで切り盛りをしているらしい。店の内装はと見ると、カウンターはコの字型。想像していたよりもゆったりと座れるつくりになっている。座敷は奥にひとつあるのだけれども殆ど使われていないらしい。所々に何か荷物らしきものが置かれている。

 立ち寄った時間が少し早かったので客は僕ひとりだけだ。ゆっくりとカウンターの奥に陣取る。まずは生ビールの中ジョッキを頼む。キンキンに冷えたジョッキにビールがなみなみと注がれている。ビールと一緒につきだしが運ばれてくる。つきだしはひじき。それを一口頬張る。ん、なかなか味付けがしっかりしている。料理も期待できそうだ。そんな思いを抱きながらビールを飲む。やはり、生ビールは最初の一口がとても美味しい。

 それから、おもむろにメニューを片手にとる。まず、僕はその店の味がどんなものなのかを判断するため、出し巻きと、揚げ出し豆腐を頼むことにしている。どちらもメニューにあり、少しホッとする。とりあえず、その2品と、豚の角煮もあるので、それを頼むことにする。女将は手慣れた手付きで次々と調理を始める。僕は調理されていくのを見ると嬉しくなる。

 最初に、出てきたのは出し巻き。大根おろしを横に添えている。ボリュームもかなりある。まずは大根おろしに醤油を少したらす。それに七味唐辛子もパラパラとふりかける。それだけ下準備をしてから、何もつけずに出し巻きを一口食べる。ダシも程よくきいていて僕好みの味に仕上がっている。それから、大根おろしを出し巻きにのせて食べる。大根おろしに少したらせた醤油と七味唐辛子がきいていて、ダシとの相性が抜群である。ん〜、本当に美味しい。

 次は揚げ出し豆腐が出てくる。うすい衣が豆腐を覆っている。その上には、大根おろしと少量のもみじおろしと刻み海苔が乗っかっている。それに腰の辺りまで、少し濃いめのダシにつかっている。衣はおもったよりサクサクしている。ダシをみていると微かに脂がういている。レンゲでそのダシをすくって飲んでみる。これが思っていたよりもしつこくない。逆にアッサリしていて美味しい。

 ここで、生ビールを飲み干しておかわりを頼む。僕はどちらかと言うと、少しだけ味が濃いめのが好きだ。というのもビールがすすむからである。生ビールのおかわりが来た。生ビールを飲みながら、豚の角煮が出てくるのを待っている。洒落た陶器の皿に盛りつけられてやってくる。皿の縁には辛子がついている。辛子を角煮につける。

 そして、箸をいれると柔らかくて一気に切れる。その姿をちらりと一瞥する。見てみると豚の脂と肉とが何層にも重なっている。お箸でつまみ上げると、今にもほろりと崩れ落ちそうである。そっと口に運び入れる。噛まなくてもいいくらいだ。口に入れた瞬間にとろけるような食感に出会う。角煮はこうでなくっちゃいけないなと思いながら、ビールを口に運ぶ。

 思わず、ふ〜っと溜め息をついて煙草に火をつける。一服しながら、次に何を頼もうかと考える。カキフライも美味しそうだ。メニューをよく見るとひとり鍋もあるじゃないか。しかも日替わりみたいだ。どうしよ、まずは様子見でカキフライを食べてから、一人鍋を注文するかどうか考えよう。よし、カキフライを追加注文しよう。それとビールをもう1杯頼もう。

 「すみませ〜ん」と声をかけようとしたら、この店の常連らしき客が来た。見ると歳のころは50代〜60代前半。手慣れた様子で、「いつものお湯割り」と女将に声をかけている。その人は、チラチラとこちらに視線を送ってくる。今にも話しかけてきそうな雰囲気である。参ったな、ひとりで落ち着いて飲みたかったのに、と思いながら、カキフライと、ビールを追加注文する。

 ビールをちびちびと飲みながらカキフライが出来るまで、ひとりの時間を堪能しようとしていた。けれど、怖れていたのが現実となった。常連客のおっちゃんが僕に話しかけてきたのだ。人懐っこい笑顔で、「兄ちゃん、この店は初めてか?」と聞いてきた。「ええ、そうです」と僕はぎこちない笑顔で答える。

 さらに、その常連客は、たたみかけるように「ここの店が出す料理はどれもこれも美味しいんやで〜」と聞いてもいないことを言ってくる。僕は戸惑いを覚えながらも、「あ〜、そうなんですか」と答える。

 僕が当惑していたのが女将には分かったらしく、「もう、こちらのお客さんもこまっているでしょ。あんまり、気安く話しかけんとき」と常連客のおっちゃんに向かって言いながら、僕の方に向かって「ごめんね。気〜悪せんといてや。あの人は、いつもああなんやから」と笑いながら言ってくる。慌てて僕は、「イヤイヤ、気にしてませんから」と取りつくろう。

 普段は、見知らぬ人でも話しかけてくれば、話し相手になったり、話しかけたりするのだけど、今日はひとりでゆっくりと飲みたかったので女将が助け舟を出してくれて助かった。ホッと一息ついて、ビールを一口飲む。そして、カキを揚げる音が聞こえてきた。僕はこの音を聞くと心底落ち着く。何故だか、理由は良くわからない。

 そして、カキフライが僕の前に運ばれてきた。こんがりと揚がってカキフライが黄金色になっている。どれもこれも大粒で美味しそうだ。早速、揚がりたてのカキフライをタルタルソースにつけて頂く。衣はカリッと揚がっている。中に入っているカキもジューシーだ。それにしても熱い。口の中がやけどしそうだけれども止められない。タルタルソースも自家製らしくて、甘さの中にもほどよい酸味がきいている。なるほど、常連客のおっちゃんの言うとおりである。これなら、他の料理も美味しいに違いない。

 僕がカキフライに舌鼓をうっている間、女将と常連客のおっちゃんが世間話をはじめている。聞き耳を立てていた訳じゃないけど、大きな声で話しているものだから、自然と会話が耳に入ってくる。どうやらおっちゃんには、息子がいるらしい。その息子が、派遣社員として働いているものの、期間の途中で解雇を通告されたらしい。それを聞いた女将は、「大変やな〜、次の仕事は決まってんの?」と心配そうにしている。「いや、まだ決まってへんねん。次の仕事言うても、なかなか見つからんからな〜。息子もええ歳やし、ほんま、この先、心配やで」とおっちゃんは言っている。

 今のご時世、こんな暗い話題ばっかりやなとつくづく思う。今、僕はフリーで物書きをやっている。このところは不景気も重なって仕事が激減した。何とか糊口をしのいでいるけれど、僕も、この先どうなるかわからない身分だ。まんざら他人事ではない。いよいよ困ったときにはどこかに就職でもしないといけないと考えていた矢先のことだったので、身につまされる思いだ。僕も今年で38歳。再就職のことを考えるとお先真っ暗である。何だか、どよ〜んとした空気が店内に漂う。

 そんな空気を察知したのか、女将は「まあ、そんなに悪いことばかりおこらんから、そんなに思い詰めんときって。いざとなったら、仕事さえ選べへんかったら、あるって、それに、私かてこの店やっていくのもしんどいんやし、今は辛抱せなアカン時期とちゃうの?」と明るく、そして気丈に振る舞った。それもそうだ。飲食業界も、この不景気の煽りをくらっているもんなと僕は思った。

 「そやな、まあ、今は辛抱の時期やな。はぁ〜、まあ、息子のところは嫁も働いているから、今すぐにどうということは無いんやけどな。しばらくは息子もバイトなり、何なりしよるやろ、まあ、くよくよせんとこ、息子にもそない言うとくわ」と幾分元気を取り戻しておっちゃんは女将に言う。僕も思わず隣で、ウンウンと頷いた。あまり、目先のことばかり心配しても仕方が無いわ、まあ人間死ぬ気になれば何でも出来るから頑張ろうと、この会話を聞きながら思った。何だか、女将に元気をもらった気がする。

 結構、お腹が膨れてきたので、最後の〆にマグロの山かけと熱燗を頼もう。それを頂いてから帰ろう。わずかに残っていたビールを飲み干して、女将に注文する。程よいあつさの熱燗が出てくる。少し大きめのお猪口が出てきた。ちびちびと熱燗を飲みながら、マグロの山かけを頂く。これもまた絶品だ。マグロの赤身が新鮮で山かけもふわっとしていて口当たりがいい。それにわさびの量も適量である。ときおり鼻にツーンと抜ける。これがほのかに酔った僕にはたまらなく心地いい。

 何気なく入った店だが、何だか妙に懐かしい気分にさせてくれた。この店に入って良かった。料理もお酒も美味しく頂けた。それに、女将の明るい佇まいをみて、少しだけ滅入っていた気分も晴れた。少しだけ元気をもらえたような気がする。明日も頑張ってみるかという気分にもなれた。今度、来たときには、あのおっちゃんにも合えるだろうか。その時は、気兼ねなく話をしてみたいと思った。
posted by Genken at 19:10| 兵庫 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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