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2008年08月30日

ミュンヘン



2006年2月 公開

監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 エリック・バナ ダニエル・クレイグ キアラン・ハインズ

 テロリストには屈しないという大義名分で報復する国家。そのために秘密工作員が動員される。彼らと言えども一般の人間と同じ心を持つ。最初は任務として割り切っていても報復と言う名の殺人を犯すにつれ精神的に疲弊していく。いくら国家のためとはいえ、人を殺すことには抵抗がある。その上、報復が成功すればするほど今度は自分たちが報復の対象となることになる。その心の葛藤を描いた作品である。

 時は1972年のミュンヘン五輪。五輪開催中に武装したテロリスト集団「黒い九月」と名乗るパレスチナ人たちが11人のイスラエル選手を人質にとる。最終的に11人の人質は全員死亡する悲劇が起きた。これを受けてイスラエル政府は犠牲者数と同じ11人のパレスチナ幹部の暗殺を決定する。諜報機関のモサドで活躍する5人の精鋭部隊を組織する。チームのリーダーとなったアヴナー(E・バナ)は、車両、後処理専門、爆弾製造、文書偽造、それぞれのスペシャリストを仲間に、ヨーロッパ中にいるターゲットを確実に仕留めるため冷酷な任務の遂行にあたることになるのだが……。

 過去を通して現代社会を鑑みることによりこの作品が持つメッセージが明確になってくる。テロとの闘いは永きに渡り行われてきた。その度に、テロには屈しないという態度のもと、報復合戦が行われてきた。結果、今でもテロとの闘いは続いている。この不毛な争いの中で何が産まれたのか。何もない。あるとすれば、憎しみの連鎖だけである。

 劇中の時代背景には東西冷戦が暗い影を落としている。KGBやCIAといった諜報機関が暗躍している時代。そこには何があったのだろうか。要人の暗殺などといった汚れ仕事もあったかもしれない。その後、世界は東西冷戦の終わりを知ることとなる。ベルリンの壁が取り払われ、ソ連も崩壊し、一見、平和が訪れたかのように思われる。しかし、現実は違った。独立を叫ぶものたちや世界の警察を自負するアメリカに対してテロは続いている。9.11の同時多発テロの行く末を見れば、テロとの闘いは未だ終わっていないことが判る。

 この作品が秀逸なのは、そんなテロとの闘いがいかに不毛かを描いている点である。誰かを始末すれば、その後釜が出てくる。終わりの見えない闘いである。最初は報復として要人を暗殺してきた5人のメンバーたち。報復が成功することにより、自分たちの身を危険にさらすことになるとは夢にも思わなかっただろう。一人、また一人とメンバーが暗殺されていくうちに、リーダーであるアヴィは恐怖を覚える。愛する祖国と家族のため任務を引受けたのだが、いつの間にか彼の心には猜疑心が首をもたげるようになる。これは報復と言う名の殺人ではないかと。自分の身や家族までも危険にさらしている状況にジレンマを覚える。その心の葛藤を見事に描写しているのである。

 歴史は繰り返されるというメッセージをこの作品を通して垣間見ルコとが出来る。現在も続くテロリストたちとの不毛な世界。真の平和は訪れないかもしれないという暗示なのかもしれない。一見の価値有りです。

オススメ度 ★★★★★ 歴史は繰り返される

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posted by Genken at 16:09| 兵庫 ☔| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画(ま行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt:  『わたしは正しいのか?』  今日は2/4公開のコチラの映画を観てきました。1972年9月5日にパレスチナの武装テロ集団”ブラック・セプテンバー(黒い9月)”によるミュンヘンオリンピック事件に端..
Weblog: ☆彡映画鑑賞日記☆彡
Tracked: 2008-08-30 23:37

No.42 ミュンヘン
Excerpt: 1972年のミュンヘン事件、まだ生まれていない時代の事件ですが映画本編その後の後日談的な内容で、この事件の全貌について知りたくなりました。結局、イスラエルとパレスチナは今もなお対立が続いています。本当..
Weblog: 気ままな映画生活
Tracked: 2009-06-29 03:44
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