2007年1月公開
監督 周防正行
出演 加瀬亮 瀬戸朝香 山本耕史
痴漢というのは愚劣な犯罪であると同時に軽蔑すら感じてしまう。こと、痴漢の冤罪事件の場合はどうなるのか。終始やっていないと言う被疑者。そのことをろくに聞かずずさんな捜査をする警察。その調書を鵜呑みにしてかかる検察官。そしてその事柄を書面と被害者の証言だけで裁かれる法廷。どの場面をとっても背筋に冷たいものを感じる。僕は普段電車とかは利用しないが、もし自分がその立場に多々冴えたとしたらと考えるとゾッとせざるにはおえない。
あらすじはフリーターの金子徹平(加瀬亮)はある日、会社の面接に向かうため通勤ラッシュの電車に乗っていた。そして、乗り換えの駅でホームに降り立った撤平の袖口を掴む女子中有学生がいた。「痴漢をしたでしょ」と問いただされる。まるで身に覚え尾内彼は戸惑いを覚えながらも得貴事務所へ連れていかれ、やがて警察へと引き和される。警察署や検察官の取り調べでも一貫して無実を主張するが、誰も耳を貸そうとうはしない。そしてついに決定的な証拠がないまま、起訴されてしまい、法廷で全面的に争うことになるのだが……
疑わしきは罰せず、推定無罪という言葉すら見当たらないこの裁判の一部始終。もし、自分が被疑者の立場であれば発狂しそうになるくらい、人の揚げ足をとり、常に何らかの刑を与えることに終始する裁判官。全てが悪意に満ち溢れているとしか感じられない。
これは何も痴漢に限ったことだけではない。日常生活においても似たような場面に遭遇することがある。例えば、仕事上におけるミスを引き起したりするとする。当然、ミスの原因を調べるのだが、誰が悪くて、誰が良くてという白黒を付けたがるケースがある。その場合、第三者が客観的に状況やら書面で確認するのだが、どうしても自分のミスでもないのに、その責を負わされることがある。
そこには、短絡的なロジックを駆使して人を貶めるように物事が進んでいく。それはまるで疑似法廷みたいなものである。徹底して責任の所在を明らかにしなければならないといった意図が見え隠れしているのである。
この作品が秀逸なのは、監督が痴漢冤罪事件を取材して練り上げた物語であり、細かいところまで綿密にリアルな展開を見せているところである。これまでの裁判映画では描ききれなかった場面がいくつも登場しており、最後まで観るものを惹き付けて話さない作品となって仕上がっているところである。
ほんの些細なことで人生が一変するさまは観ているものを釘付けにするのである。決して他人事とは思えない作品である。未見のかたには是非一度観てもらいたい作品である。
オススメ度 ★★★★★ 緻密に描かれた法廷シーンを堪能して下さい
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