2007年10月公開
監督 鶴橋康夫
出演 豊川悦司 寺島しのぶ 長谷川京子
誰かが誰かを愛するという行為はごく自然な摂理だ。ただ、愛するが故に愛する人に手をかけるという行為は極めて稀である。どうして殺してと冬香(寺島しのぶ)は菊治(豊川悦司)に頼んだのか?劇中ではそれが争点として描かれている。
「あなたは私のために死ねますか?」と冬香が菊治にそう問いかける。まるで観客に問いているかの如く。人は人をそう簡単に愛せることは出来ない。そう連想させる台詞である。愛しているという言葉は口に出せても、その愛しているという証明としてあなたは何を求めますか?先の冬香のような言葉がでてくるのではないだろうか?
「あなたは死にたくなるほど、人を愛せますか?」これは裁判の過程において織部(長谷川京子)に発した言葉である。この言葉から分かるように菊治も冬香を愛していたのだと。「愛しているから殺した」事件を担当する女性検事の織部は、菊治の言葉に困惑しながらも真相を追求していく。
物語は、菊治のファンであるという人妻・冬香との出会い恋に落ちていった。逢瀬のたびに二人は激しく心と体を求めあう。そしてついに「首を絞めて」という冬香の言葉に応じてしまった菊治。「何故、男は女を殺したのか、そして女は死を望んだのか」そんな疑問を抱かせたまま裁判のときを迎える。
そして法廷の扉が開かれ、今、愛と死の真相があきらかになる。
この作品は渡辺淳一氏の同名ベストセラー小説をモチーフに描かれた作品。男女の愛の深層心理を官能的に書き綴ったラブストーリー。監督はこの作品ではじめてメガホンをとったTVドラマ界のベテラン・ディレクターの鶴橋康夫である。
愛しているから殺したというほどまでに、人は人を愛することができるのだろうか。いやそもそも、そのテーゼが成り立つ前に男性側から観る主観と、女性側から観る主観はおのずと違ってくるだろう。そもそもその二極性から生じる感想の違いは大きいのではないだろうか?これは男女の愛の深層心理をアンチテーゼとして描かれた作品であって、いささか官能的ではありすぎる。それも演出のひとつなのだろう。観賞後も尾を引く作品に仕上がっている。あなたはこの映画を観て何を感じ取るのだろうか。これから観る人は何を感じるのだろう。そんな疑問を投げかけてくれる作品となっている。
オススメ度 ★★★★☆ あなたは死にたくなるほど人を愛せますか?
ランキング今日は何位?
【関連する記事】