らも〜中島らもとの三十五年をもう一度読んだ。
昨年の夏ころ僕は鬱病の状態が酷かった。そこで出会ったのが中島らも氏のエッセイだ。次々と貪るように読んでいった。まるで中島らもの生き方が凝縮されたエッセイに救いを求めるかのように。彼が躁鬱病を患っていたのはエッセイを読めば分かる。そこに自分の姿を投影して彼から活力を貰えるかのように過ごしていた。
この本は、そんな中島らも氏の素顔を妻の目線から描いた作品である。そこから見えてくるのは、繊細で優しい姿や醜く厭らしい生き様を妻のミーは何のてらいもなく美化せずに等身大のらもを書いているのである。他人からみれば波瀾万丈なのかもしれないが、当人たちにとっては特別なことじゃなく普通の生活だと捉えているのである。それぞれが上手いことバランスをとっているのだと感じられる。やはり、中島らもはミーにこの上なく愛されていたんだろう。羨ましいかぎりである。特に結婚に失敗した僕にはそう映る。
二度目に読んだ時にははっきりと感じられた。おそらく、三度目読んだ時にはひょっとしたら違う感想を持つかもしれないけれども。それに、男性と女性とで読後の感想は変わるだろう。だけど、僕には中島らもの弱さや強さ、ずるさが垣間見えて妙に親近感を抱いてしまう。おそらく、天才中島らもに対して自分自身を重ねあわせて見ているのだろう(恐れ多いのだが)。
またしても、僕が鬱の状態が少し酷くなってきたときにこうして中島らもを描いた作品に出会うとは運命を感じてしまう。たかだか一冊の本であるけれども、僕を絶望の淵から救ってくれた作品である。
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