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2007年07月19日

出口のない海



2006年

監督 佐々部清
出演 市川海老蔵 伊勢谷友介 上野樹理

 僕がまだ小学生だったころ社会の授業でこんな宿題が出た。それは太平洋戦争について親にどんな経験をしたのかというものであった。僕の両親はともに昭和16年生まれだから集団疎開やら防空壕などの話を聞いた記憶が未だに鮮明に残っている。その宿題が出された授業のときに特攻隊や人間魚雷の存在があったんだということも知った。終戦間近には零戦に片道分だけの燃料を入れて特攻をしたり、人が魚雷のなかに入り特攻していったということを聞いて、幼かった僕は恐怖を感じたのを覚えている。戦争を知らない世代、つまり僕が親になってから子供に戦争について教えることをしていないのである。戦後の貧しかった時代についても親から聞いてもピンとこなかったのが正直な感想である。しかし、戦争を扱った映画を鑑賞するたびに思うのが社会がどれほど変わったのかを意識させられる。食べることに不自由せずにあまつさえ好き嫌いを言いながらお腹が一杯になったといい残してしまう。コンビニ弁当でも賞味期限が過ぎれば破棄される現状。反対に賞味期限が過ぎた食料を再利用したりと矛盾だらけの世界に様変わりしている。大人となった僕たちは大抵は自分のことを最優先にしてあまり他人のことは考えない世の中になったりしている。今僕たちが住んでいる世界が、戦時中にお国のためといいながら死んでいった若者たちが望んでいた世界なのだろうか。この出口のない海をみながら思わず考えてしまったことである。

 時代は太平洋戦争の終戦間近で敗色が濃厚になっていたとき、海軍は戦況を覆すために最後の秘密兵器として”回天”を開発する。回天とは定員1名で脱出装置なしの小型潜水艦。しかも大量の爆薬を搭載し前進しか出来ない代物である。そこに乗り込み自ら操縦して敵艦への自爆攻撃を仕掛けるというものである。物語は1隻の潜水艦に極秘任務(回天搭乗)を帯びた4人の若者が乗り込んでいた。その中の一人市川海老蔵扮する並木浩二の視点で丁寧に描かれている作品となっている。

 自爆攻撃をかける若者の微妙に揺れる心理について描いているのである。お偉方が考えているようなお国のためじゃなく、身近な家族であったり恋人のことを考えていたりするのである。甲子園の優勝投手である並木浩二は大学進学後に肩を痛めてしまう。それでも野球への情熱は衰えることはなかった。だが折しも時代は戦争へと向かっていようとしていた。そんな時代の風潮に翻弄されながら、並木浩二は自ら海軍へと志願し回天の極秘任務まで同様に志願する。この物語はそういった並木浩二の回想シーンを随所に散りばめ、彼の微妙な心理の揺れを感じさせられるような創りになっている。

 激しい戦闘シーンもなければ、お国のためにといった戦争を美化することもない。ただ淡々と並木浩二の視点で描かれているので派手な作品を期待していた人は少々肩すかしをくらうかもしれないが、冒頭にも述べたように若くして死んでいった若者たちが望んでいた世界が今の社会なのだろうか。そこを焦点にして見ると秀逸な作品に仕上がっていると僕は考える。最後に劇中での並木浩二が後世に”回天”といった人間魚雷があったということを伝えるために僕は死ぬんだという言葉がこの作品を読み解く上で重要なキーワードであると僕は考えている。

オススメ度 ★★★☆☆ 戦時中に考えていた平和とは今の世なのだろうか?

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posted by Genken at 15:38| 兵庫 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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