2006年1月公開
監督 テリー・ジョージ
出演 ドン・チードル ソフィー・オコネドー ホアキン・フェニックス
〜1994年ルワンダの首都ギガリ。長年にわたり多数派のフツ族と少数派のツチ族の民族抗争がエスカレートしていた。一旦、和平交渉がまとまるかのように見えたが、首相が暗殺され両民族は一触即発の状態となる。街ではフツ族派ラジオ局からはツチ族を根絶やしにさせようと煽動的なプロパガンダを繰り返し流されていた。街はそのせいで不穏な空気に包まれていた。そしてついにフツ族はツチ族の大量虐殺を開始していた。そんな状況の中で、ルワンダの高級ホテルミル・コリンの支配人を努めるフツ族のポール(ドン・チードル)は、妻タチアナ(ソフィー・オコネドー)がツチ族であることから、何とか家族だけでも守ろうとしていた。フツ族からの襲撃を逃れるために、難民たちはホテルに続々と集まってきた。というのも、ミル・コリンは外国資本のためフツ族の民兵たちもうかつに手が出せないでいた。命からがら逃げてきた難民たちをみたポールの心境は複雑に揺れる。だが、難民たちを見捨てることが出来ない彼は一人で虐殺者たちと相対することになるが……〜
この作品は、100日で100万人が虐殺された事件を背景にして、1200人の命を救ったあるホテルマンの行動を描いた実録社会派映画である。最初から最後まで緊張感を保たせる映画は少ない。とくに実録社会派映画としては秀逸で質の良い作品に仕上がっている。
民族抗争の激しさを感じることは、残念ながら今の平和ぼけした日本で育った僕はどうしても対岸の火事としてしか捉えることが出来ない。何故、そこまで民族同士で憎しみ合い殺し合わなければならないのか。ツチ族という理由だけで殺される。その底流に流れるのは、最初のテロップで流れているのを一部引用してみたい。
>ツチ族は植民地支配に協力し、フツ族の土地を奪い搾取した。今、その反乱軍が帰ってきた。奴らはゴキブリで人殺しだ。ルワンダはフツ族の国。我々こそ多数派。我々はルワンダ愛国戦線(RPF)の反乱軍どもを一掃する。こちらは、フツパワーのRTLM局。油断するな。隣人を監視しろ。
こういった激しいプロバガンダが四六時中流され緊迫感を煽られる。こういった放送を流されたらツチ族は行きた心地はしないだろう。実際に100万人の犠牲者が出ていることには目を背けることは出来ない。劇中で描かれているツチ族の無惨な遺体。あちらこちらに転がっているという表現がピッタリである。
特に印象的なシーンは、どこの国かはわからないけれど取材に来たクルーたちが酔っぱらってその一人が主人公に言ったひと言である。こんな悲惨な映像を流しても、ディナーをしながら「怖いわね」のひと言で終わるんだよ。というシーンである。西側の協力を信じていた主人公ポールの表情はあまりにも切ない。恐らく、僕もその中の一人だろう。物語が進んで行くうちに、欧米や国連の対応はルワンダを見捨てるところを描かれている。絶望を感じる主人公。ルワンダでは、人の命が軽く扱われる。ツチ族というだけで殺され、ツチ族を守ろうとしたフツ族も裏切り者としてそしられ殺される。まるで、第二次大戦中のドイツと同じである。いわゆる選民思想に支配されている。
一口に100万人殺されたといってももはやそれは数字になっている。人が一人殺されただけで大騒ぎになるのに、100万人と言えばもはや想像を絶する数字に変わり、人ではなく数字に置き換えられる。殺されていなければ幸せな生活を送れたかもしれないのに。未だに世界では難民と呼ばれる人たちが存在する。紛争も止まない。歴史は繰り返されるという。しかし、こういう悲しみや悲惨な歴史の繰り返しは願い下げたいものである。
もう一度世界観を見直し考え直すためには珠玉の作品となっている。未見の方は是非一度手に取って観てもらいたいものである。
オススメ度 ★★★★★ 悲惨な歴史は繰り返されるものなのか?
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